「熊谷キリスト教会 月報 2024年2月」より

この人たちを使徒たちの前に立たせた。使徒たちは祈って、彼らの上に手を置いた。

使徒の働き6章6節

エルサレムに生まれた世界で最初の教会は、多くの人々から信頼され、慕われ、使徒の数が増えていきました。そして、教会の中には乗り越えなくてはならない課題が生まれていくのです。ここに書かれている具体的な例として、ギリシア語を使うユダヤ人たちから、ヘブル語を使うユダヤ人に対して苦情が出た事が挙げられています。

本来、ユダヤ人はヘブル語を使う訳ですが、この頃には、ユダヤ人のコミュニティは、イスラエル・ユダヤ地方だけでなく、その周りの周辺諸国に広がっていました。そして、周辺諸国での公用語がギリシア語であったために、周辺諸国で生まれ、過ごしてきたユダヤ人は主にギリシア語を使っていたのです。彼らは「ヘレニスト」と呼ばれました。古い文献に、「食事の配給がヘブル語(厳密にはアラム語)を話すユダヤ人たちによって司られていた」とあるそうで、そのために、ヘレニストのやもめ、すなわち夫のいない未亡人たちがなおざりにされていたようなのです。格差がつけられていて、それが問題になっていたようです。

この問題を解決するために、12人の使徒たちは、弟子たちを全員集めて、「私たちが神のことばを後回しにして、食卓のことに仕えるのは良くありません。」と言い、「弟子たちの中から、御霊と知恵に満たされた、評判の良い人たちを七人選びなさい。」として、その七人に、使徒たちに代わって、食卓のことや、それ以外の問題事の解決を任せるようになったのでした。そうする事で、使徒たちが、祈りと御言葉の奉仕に専念するためでした。

この提案は教会の人々から喜んで受け入れられ、七人が選ばれたのでした。その七人の名前が5節にこうあります。「信仰と聖霊に満ちた人ステパノ、およびピリポ、プロコロ、ニカノル、ティモン、パルメナ、アンティオキアの改宗者ニコラオ」でした。

そして6節には、選ばれた七人を使徒たちの前に立たせ、使徒たちは祈り、彼らの上に手を置いたのでした。この、働きのために手を置いて祈る事を、「按手」と言います。

新聖書講解シリーズ「使徒の働き」の中で、著者の村上宣道牧師は、こう述べています。「ここに初めて、教会組織らしいものが生まれた。その発端は、教会内に生じたトラブルであった。とかく私たちは、教会にトラブルがあって欲しくないと思う。しかし教会は、その試練から得がたいものを発見し、より強くなっていくことができる。」

そして7節ではこうあるのです。「こうして、神のことばはますます広まっていき、エルサレムで弟子の数が非常に増えていった。」さらに、驚くべき事として、こう続くのです。「また、祭司たちが大勢、次々と信仰に入った。」

こうして教会は、問題が起こりますが、その問題を乗り越える事によって、成長していくのです。

(by 牧師)